収入3割減で対象 自営業者のための国民健康保険の減免申請
新型コロナの影響から東京特別区(23区)、武蔵野市、三鷹市の6月、7月のタクシー売り上げは前年同月比3割減。特に厳しかったのは自営の個人タクシーの運転手で、国民健康保険(国保)の負担だけでも大きい。だが、コロナで減収した自営業者には減免措置があるので、ぜひ申請を検討したい。
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タクシー運転手(男性)の2019年の賃金は、全国平均で360万3800円。東京都が484万円、大阪府は412万円、最も低い徳島県で205万円だった。
タクシーは国内に約22万台(車両数)あり、うち個人タクシーは3万2315台。今後の数年間は個人タクシーの大幅減収が避けられない情勢だが、コロナ禍で事業収入が減少したり、またはコロナ感染した場合には、国保の保険料が20%~全額、免除される制度がある。
「個人事業主が加入する国保は、前年の所得合計に応じて自動的に保険料の均等割り額が『7割』『5割』『2割』軽減される措置があります。さらに新型コロナで、より減免の対象が拡大されました。個人タクシーの運転手さんなど自営の方々は大いに助かるでしょう」(特定社会保険労務士の稲毛由佳氏)
3割減収などの条件を満たせば全額も
保険料が労使折半の健康保険(社保)の会社勤めとは違い、国保の加入者は全額自己負担。妻や子の扶養もなく、3人家族ならそのまま3人分の金額になる。
東京都で平均額484万円の所得を得た個人タクシーのモデル世帯(40代、4人家族)で試算してみると、保険料はざっと年間55万円。サラリーマンが思っている以上にはるかに負担は重い。ただし、稲毛氏が説明したように、コロナで減収の見込みの世帯には国保の減免がある。
その条件は、主たる生計維持者がコロナ感染で死亡、もしくは重篤な傷病(1カ月以上の治療など)を負った世帯は無条件で全額免除。
一方、減収の場合は条件があり、まず2019年の合計所得金額が1000万円以下であること。さらに2019年の事業収入等(事業収入、不動産収入、山林収入及び給与収入)以外の所得総額400万円以下であること。この条件を満たした上で2020年分の事業収入が3割以上減少(見込み含む)したら対象になる。
少しややこしいかもしれないが、収入とは個人タクシーで言うところの売り上げ、所得は収入から必要経費(車両ローン、組合費、ガソリン代、決済端末機の利用料等)を引いたものを指す。個人タクシー運転手は、ほぼこの条件の範囲内に収まる。
「減免幅は前年の所得金額によって変わってきます。廃業や失業した人は100%免除。同じ3割減収でも300万円以下の世帯は負担も重いわけですからやはり100%免除になり、300万~400万円は80%、400万~550万円は60%、550万~750万円が40%、750万~1000万円が20%と少しずつ減免割合も減っていきます」(前出の稲毛氏)
先ほどのモデル世帯(所得484万円)に当てはめると、減免割合は60%。保険料額は「世帯の被保険者全員の保険料額」×「主たる生計維持者の前年の所得」÷「被保険者全員の前年合計所得」×減免割合で算出される。妻や子にまったく所得がなければ(3人とも国保加入)、このケースは年間55万円の保険料が22万円にまで減る。もちろん、タクシー運転手に限らず、自営のトラック運転手や飲食店の店主もみな同じだ。ひとつ気を付けなければならないのは、減免対象が来年3月31日までに納付期限が設定されているもので終わってしまうことだ。
申請は「郵送」で行う
では、申請の手続きはどのようになっているのか。都内は基本的に「郵送」による受け付けになる。例えば、江戸川区では「減免申請書」と「収入申告書」をダウンロードし、申請者の本人確認ができるもの(運転免許証、パスポート等のコピー)を用意。さらに申請の理由がコロナによる死亡や傷病なら死亡診断書か医師の診断書等の写し、減収なら廃業届・退職証明書等、もしくは2019年の収入が分かるもの(確定申告書の控え、源泉徴収票等)と今年1月以降の収入が分かるもの(帳簿や通帳等)を添え、コロナ減免担当宛てに郵送する(来年2月1日まで)。申請から審査結果の通知までは1カ月ほどかかるという。
また、江東区も申請の提出書類までは一緒だが、審査結果の通知については3カ月ほど要する可能性がある。申請中も督促状が送られてくるので、いずれにせよ申請は早いうちの方がいい。
■国民年金も免除措置あり
これとは別に「国民年金」の保険料も免除基準が緩和されている。来年6月分までが対象(今年2月にさかのぼって申請可)で、月額1万6540円の保険料が所得と世帯人数に応じ、「全額」「4分の3」「半額」「4分の1」に減免される。将来受け取る年金額はその分減るが、たとえ全額免除でも2分の1が「保険料を納付した(税金で補填)」ものとしてカウントされる。
全額免除の年収目安は「夫婦と子2人」で額面給与で257万円未満。大幅に収入が減った個人事業主はこちらも検討したいところだ。申請は住んでいる市区町村役場、または年金事務所へ郵送で行う。
コロナが終息しても売り上げが戻ってくるまでには数年はかかる。自営で働く人々には厳しい環境が続くが、うまく減免を使って景気が上向くまで乗り切りたい。