著者のコラム一覧
松本泰「まつもと米穀」社長

1973年京都府生まれ。同志社大を卒業し、リクルート社などを経て、2005年、祖父の代から続く「まつもと米穀」の3代目社長に就任。コメ不足の影響で2025年3月に一時閉店していたが、同年9月2日から営業を再開。

(1)社長が独白!創業90年の米屋はなぜ閉店せざるを得なかったのか

公開日: 更新日:

 年が明けると、品不足の傾向はより強まった。この頃になると業者間の融通は皆無となり、いよいよ玄米を確保する手段がなくなってきた。そうした中で出された備蓄米放出の決定。「打開策になるかもしれない」と望みを託した2月には、考えられるあらゆるルートで獲得への手を尽くしたが、巨大組織の前で地方の一米穀店はあまりに無力だった。 

 日々減っていく在庫をにらみ、注文を断らねばならない事案が増えた。仕事のなくなった職場には沈鬱な雰囲気が漂ったが、焦る私を前にスタッフたちは気丈だった。話し合いの中で、「納得いかないものを仕入れて売るくらいなら、いったん退こう」と結論を導きだした。

 閉店にあたっては、ポスターを掲示することにした。当初は必要最小限に閉店を伝えようと考えた。プライドが邪魔をし、恥ずかしいという思いも少なからずあったからだ。しかし、「良いものにこだわってきたからこそ、閉店する」という思いと、顧客の求めに応えられない申し訳なさを表すためには必要な掲示だというスタッフからの進言に従うことにした。それでも、「必要以上にあおることにならないか」との懸念もあり、閉店前には祖父の墓を訪れて心の沈静を図った。

■関連キーワード

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  2. 2

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  3. 3

    「おまえもついて来い」星野監督は左手首骨折の俺を日本シリーズに同行させてくれた

  4. 4

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  5. 5

    巨人大ピンチ! 有原航平争奪戦は苦戦必至で投手補強「全敗」危機

  1. 6

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 7

    衝撃の新事実!「公文書に佐川氏のメールはない」と財務省が赤木雅子さんに説明

  3. 8

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  4. 9

    高市首相が漫画セリフ引用し《いいから黙って全部俺に投資しろ!》 金融会合での“進撃のサナエ”に海外ドン引き

  5. 10

    日本ハムはシブチン球団から完全脱却!エスコン移転でカネも勝利もフトコロに…契約更改は大盤振る舞い連発