改憲に喝!異見

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「『改憲』の論点」 木村草太ほか著

 自民党総裁選で改めて浮上した改憲への急加速に喝!



 テレビでもおなじみの若手法学者をはじめ「立憲デモクラシーの会」の主要メンバー8人が憲法問題をめぐる代表的なテーマを解説する。テーマは「自衛隊明記」「新9条論」「専守防衛」「改憲勢力」「アメリカ」「解散権」「国民投票」「立憲主義」の8つ。第1章から安倍政権が意気込む「自衛隊明記改憲」にどんな問題があるのかを歯切れよく論じる。

 実は「現行憲法のままでは自衛隊は違憲」という安倍政権の認識自体が誤り。現行憲法下でも自衛権の行使は可能なのだ。他方、青井未帆学習院大教授は「文民統制」の意味がきちんと理解されてこなかったと指摘。かつて存在した防衛参事官がいつのまにか廃止され、国家安全保障会議に警察を管理する国家公安委員長が入るなど「軍事の統制」には不向きなしくみになっているという。

 戦後一貫して平和を希求してきた日本社会。その根幹にあった「9条」をひっくり返そうともくろむ現政権に対抗する市民のための改憲理解に役立つ入門といえるだろう。

(集英社 880円+税)

「AIと憲法」山本龍彦編著

 AI(人工知能)がいま急に話題になっているのはなぜか。単に人間の話し相手になってくれそうだからではない。驚異的なプロファイリング(個人の特定と行動予測)能力や、過去の履歴を基にした信用スコアを組み合わせ、あらゆる人間を自動的に区分けしてゆく可能性を有しているからだ。いったんこの流れが固まると、これまでの常識とは違う形でプライバシーが丸裸にされ、人権が気づかぬうちに踏みにじられる懸念がある。要するに憲法の定める「基本的人権」が侵されるかもしれない。

 本書は40代と30代の法学者、政治学者によるAIと憲法だけでなく選挙、民主主義、裁判、刑事法、経済など多方面からの問題提起と分析を提示している。

(日本経済新聞出版社 2400円+税)

「憲法が変わるかもしれない社会」高橋源一郎編著

 安倍政権の改憲運動に正面から挑んできた作家といえば高橋源一郎。一昨年、話題になった若者たちの「シールズ」もこの人の大学の教え子が中心だった。本書は高橋氏と反改憲の知識人らの討論集。相手は長谷部恭男(法学者)、片山杜秀(政治学者)、石川健治(法学者)、森達也(ドキュメンタリー作家)、国谷裕子(ジャーナリスト)、原武史(政治学者)と論客ぞろい。

 かつて学生運動に明け暮れ、拘置所の独房での乱読が自分の「大学」だったと語る高橋氏が、各方面の専門家にすなおな疑問をぶつける公開セミナーの記録だ。

(文藝春秋 1500円+税)


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