藤井青銅さん(作家・脚本家)

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4月×日 担当しているオードリーのオールナイトニッポンの立ち合い。先日は日本武道館での番組ライブも話題になった。深夜放送明けの翌日は仕事にならず、読書日だ。杉原里美著「掃除で心は磨けるのか」(筑摩書房 1500円+税)を読む。最近時々聞く、素手でトイレを掃除するという精神主義的な行為を奇妙に思っていたが、この本は掃除だけでなく二分の一成人式、親学など、個人の心の領域に関することが学校現場に進入しているというリポート。副題に「いま、学校で起きている奇妙なこと」とある。信奉者がいるのは構わないが、こういう方たちはなぜか「国民運動」にしたがるんだよなあ。

4月×日 渋谷ヒカリエで、柳家花緑師匠との落語会。私が書いて師匠が語る。全国47都道府県に現代の新作ご当地落語(同時代落語)を創るプロジェクトで、今回の高知県が21県目。先は長い。言い出しっぺだから誰にも文句を言えないが。
大森洋平著「考証要集2」(文藝春秋 730円)はNHKの時代考証のプロが書いたもので、前作も楽しく読んだ。間違えて理解している歴史知識をわかりやすく正してくれる。書き手としては冷汗をかく項目もいくつか。放送現場が若くなり、少し前の常識が通じない。昭和40年代程度の当たり前の知識をわざわざ書いておく必要があるのは、面白いが、困ったものだ。

4月×日 和モノ仕事の一方、海外SFでバランスをとる。テッド・チャン著「あなたの人生の物語」(浅倉久志他訳 早川書房 960円)は、映画「メッセージ」の原作も含む中短編集。表題作も面白いが、「顔の美醜について―ドキュメンタリー」というのが面白かった。

4月×日 大阪でパイのイベント。食べるあのパイ。私はなぜか「(一社)日本パイ倶楽部」の理事なのだ。以前「ゆるパイ図鑑」という本を出したことが縁で、こうなった。周囲には「藤井さん、やってることバラバラじゃないですか」と呆れられるけど、いや、そういうのもいいんじゃない?

【連載】週間読書日記

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