鎌田慧(ルポライター)

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6月×日 妻を連れて病院にいった。風邪気味ですと言うと、ついでに診てあげましょう、と女医さん。診察券を急拵えしてレントゲンをかけると、肺炎という。入院はしないで抗生物質。

6月×日 抗生物質で快調。午後から起き出して立川の市民講座へ。帰ってきてから寝たっきり。

6月×日 一日横臥。これでは日刊ゲンダイの締め切りに間に合わない。送られてきた色川大吉さんの「イーハトーヴの森で考える」(河出書房新社 1200円+税)を枕元に置く。世界中を回ってきた色川さんも94歳、晩年に宮沢賢治を書こうとするのは、判るような気がする。巻末に賢治の末期の詩の引用。

「あなたの方から見たらずいぶんさんたんたるけしきでせうが
わたしからみえるのは
やっぱりきれいな青空と
すきとほった風ばかりです」

6月×日 一日横臥。咳を堪えている。これも頂いた温又柔さんの「『国語』から旅立って」(新曜社 1300円+税)。台湾出身なのに日本語で小説を書いている若い作家で、とてもこまやかな、のびのびした明快な日本語で、読んでいて気持ちがいい。どうしてなんだろう。それを知りたくてこの本も読んでいる。

6月×日 温又柔さんは3歳の頃、台湾人の両親と日本に来て、家庭内では台湾語と日本語で話し台湾語の繁体字と日本の漢字、ひらがなとカタカナ、ローマ字と英語、そして中国に留学して簡体字を学ぶ。もちろん、中国と台湾の深い溝も感じさせられる。それを軽やかに乗り越える若い知性は、魅力的だ。

6月×日 肺炎を宣告されて20日たったが、咳は止まらず元気がでない。いくつかの約束をキャンセルして、寝誕生日となった。肺炎を克服して社会復帰としたい。

 金貴粉著「在日朝鮮人とハンセン病」(クレイン 2000円+税)。

 最初に知り合ったハンセン病の回復者が、二重に差別されていた在日の国本衛さんだった。本国から強制連行され、日本人以上に過酷な収奪の対象になった朝鮮半島の人たちには、詫びる言葉をもちえない。

【連載】週間読書日記

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