元エアロビック日本代表の大村詠一さん語る1型糖尿病との闘い

公開日: 更新日:

デバイスを活用して人生を楽しむ方がいい

 現役を引退したあとは、練習しない分、楽になると思っていたんですけど、運動量が減るとインスリンの効き方が変わって、それまで培ってきた血糖コントロールが通用しませんでした。デスクワークが増え、仕事量やストレス、寝不足などによるインスリンの調整が難しくなりました。

 さらに4年前から喘息を発症し、ステロイド治療を行う際は、ますますコントロールが複雑になりました。ステロイドを入れると血糖値がすごく上がるので、インスリンをたくさん入れないといけない。けれど、ステロイドの効きが切れると今度は急激に低血糖状態になってしまうのです。そのために、何度かオンラインミーティングを欠席してしまいました。「病気を理由に『働けない』は絶対しない」と決めていたのでへこみました。

 それもあって、去年からインスリンポンプを使い始めたのです。治療のためだけに生きたくはないので、医療費は高くなってしまいますが、こうしたデバイスを活用して人生を楽しむ方がいいと考えたのです。

 糖尿病を取り巻く環境はどんどん変わっています。新しい薬、新しいデバイスが次々生まれています。その分、今までになかった問題も起こりますけどね。地域における情報や治療の選択肢の格差もそのひとつです。患者が努力しなくても、ちゃんと情報が伝わるやり方を考えなくちゃいけない。糖尿病の人に限らず、病気のあるなしにかかわらず、誰もが一緒に生活するのが当たり前の社会になるように、今、地道に活動しています。

(聞き手=松永詠美子)

▽大村詠一(おおむら・えいいち) 1986年、熊本県出身。インストラクターである母の影響で4歳からエアロビックを始める。96年にエアロビック競技に転向。2016年に現役を引退し、日本エアロビック連盟理事を務め、21年から広報委員長を務める。1型糖尿病の啓発活動を行う「FamilyDesignM」のアドバイザーや、病気があっても大丈夫と言える社会の実現を目指す「ピーペック」のメンバーでもある。

■本コラム待望の書籍化!愉快な病人たち(講談社 税込み1540円)好評発売中!

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  2. 2

    巨人・桑田二軍監督の電撃退団は“事実上のクビ”…真相は「優勝したのに国際部への異動を打診されていた」

  3. 3

    クマ駆除を1カ月以上拒否…地元猟友会を激怒させた北海道積丹町議会副議長の「トンデモ発言」

  4. 4

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  5. 5

    クマ駆除の過酷な実態…運搬や解体もハンター任せ、重すぎる負担で現場疲弊、秋田県は自衛隊に支援要請

  1. 6

    露天風呂清掃中の男性を襲ったのは人間の味を覚えた“人食いクマ”…10月だけで6人犠牲、災害級の緊急事態

  2. 7

    高市自民が維新の“連立離脱”封じ…政策進捗管理「与党実務者協議体」設置のウラと本音

  3. 8

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  4. 9

    恥辱まみれの高市外交… 「ノーベル平和賞推薦」でのトランプ媚びはアベ手法そのもの

  5. 10

    引退の巨人・長野久義 悪評ゼロの「気配り伝説」…驚きの証言が球界関係者から続々