日本肥満学会が提唱する病気の新概念…女性の低体重/低栄養症候群「FUS」とは
国際学会は“痩せ”が関連する「5型糖尿病」認定を公式発表
痩せや低栄養で生じる健康リスク・症状は、〈表〉にあるように多岐にわたる。骨密度は20代がピークでその後減っていき閉経で一気に減少するが、痩せや低栄養の人はピーク時の骨量がそもそも高くないため、骨折しやすい骨粗しょう症のレベルまで比較的はやく到達してしまう。
糖尿病は肥満がリスク因子のひとつだが、痩せもリスク因子だ。田村教授らが18~29歳の痩せ形女性と標準女性を対象に、糖尿病のなりやすさを調べる試験を行ったところ、痩せ形女性はインスリンの分泌量低下とインスリンが効きにくいインスリン抵抗性が生じており、耐糖能異常(境界型糖尿病)の割合は、標準体重より7倍高かった。
「さらに研究で分かったのは、痩せ形の若年女性では、食事量、身体活動量、筋肉量がいずれも少ない『エネルギー低回転型』が多数を占めていることです。中年女性を対象の研究で、筋肉量が少なく、筋肉に脂肪がたまっている人ほど血糖値が高いという結果を得ており、若年女性でも同様のことが考えられます」
現在、糖尿病は1型と2型があるが、4月に開催された国際糖尿病学会では、糖尿病の新たな分類である「5型糖尿病」の認定が公式発表された。長期間の低栄養で膵臓の発達障害が起こり、インスリンの分泌がうまくできないようになった状態と捉えられている。低体重・低栄養の問題点が、新たに指摘されたとも言える。
「痩せに関しては、価値観を変えていくことも重要です。親世代が無意識に『痩せた方がいい』という間違った価値観を子どもに連鎖させているケースもある。痩せたい願望を生じさせる社会全体を変容していかなくてはならない」
「痩せてきれいになったね」が褒め言葉だと思っていないか。今回のFUSの提唱を機に、意識の見直しを。