(27)介護、家の管理、相次ぐ出資…すべてが私一人の肩に
父はものを捨てられない人だった。納戸代わりに使っていた部屋には、大昔に仕立てたスーツ、定年退職後に始めた社交ダンスの衣装、私が生まれた頃に使っていた脚のついた木製テレビなど、あらゆるものが、実家の一室に大量に保管されていた。これらを今後、どう処分すればいいのか、見当もつかなかった。
時間の捻出と往復の飛行機代、そして実家の維持にかかってくるだろう費用負担への恐怖もあった。父は死亡保険に入っておらず、すべてのお金を趣味に使い尽くして一銭も残していなかった。
そんな中、母のケースワーカーから、そろそろ退院して次の生活に移行するための準備を始めてほしいという話があった。東京での仕事を続けながら、遠距離介護をどう成り立たせるのか。空き家となった実家の管理をどうするのか。すべてが私一人の肩にかかっているのだった。 (つづく)
▽如月サラ エッセイスト。東京で猫5匹と暮らす。認知症の熊本の母親を遠距離介護中。著書に父親の孤独死の顛末をつづった「父がひとりで死んでいた」。