(32)代わってくれる人はいない…私がやるしかない

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 そのため、特養についての手続きは見送ることにした。まずは、母が退院後すぐに入所できる施設を確保することを優先しなければならない。

 当時の自分がどのように情報を整理し、何をどう選択したのかを後からたどるには、手帳の記録が役に立っている。この時期、私は仕事の予定と母のことをすべて一冊の手帳に時系列で書き込み、抜け漏れがないようにしていた。業務に関する連絡、医療機関とのやりとり、母の年金関連の手続き、高齢者施設候補の一覧、必要書類の締め切り日──。パニックに陥りそうな日々の中で、あらゆる情報を一元化することで、何とか処理が追いついていた。

 その手帳を見返すと、短期間に相当数の対応を重ねていたことがわかる。体や心に無理がかかっていたのだろう、今でもその時のメモの内容を見ると、その頃の焦燥を思い出して動悸が激しくなる。

 とはいえ、他に代わってくれる人はいない。必要なことを粛々とこなすしかなかったのだ。まずは民間の有料老人ホームの中から条件に合う施設を選ぶ。それを優先させるしかなかった。(つづく)

▽如月サラ エッセイスト。東京で猫5匹と暮らす。認知症の熊本の母親を遠距離介護中。著書に父親の孤独死の顛末をつづった「父がひとりで死んでいた」

【連載】突然、母が別人になった

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