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下山祐人あけぼの診療所院長

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

肝硬変と肝細胞がんで予後数カ月…残された時間は家族と自宅で

公開日: 更新日:

 肝硬変は進行に伴い、さまざまな症状が現れます。その中でも見た目で分かりやすいものの一つが、腹部に水がたまる「腹水」です。少量であれば大きな症状はありませんが、量が増えるにつれて、むくみが出たり、皮膚が黒褐色になったり、黄疸が現れたり、出血しやすくなったりと、複数の症状を併発するようになります。

 一時的な症状の緩和や検査目的で、腹部に特殊な針を刺してたまった水を排出する「腹水穿刺」という処置があります。しかしこの患者さんは、痛み止めが効きにくい体質であり、ご本人の強い希望もあり、あえて行わない方針となりました。

 ご自身の状態をよく理解し、治療の方向性についても明確な意思を持っておられることは、在宅医療を行う上で非常に重要です。特にこの方は、ご自身の体調について詳しく話してくださるだけでなく、趣味の話も交えながら、私たちスタッフに心を開いてくださいました。

 釣りが趣味で、かつては飛行機に乗って遠方まで出かけていたという、筋金入りの釣り好きの方でした。好きなことをやって、たとえ寿命が短くなっても構わない。そんな潔い生き方は、療養の場であるお部屋にも、どこか穏やかで心地よい空気をもたらしていました。時折現れる痛みに対しては対応しましたが、前述のように痛み止めが効きにくい体質。医療用麻薬の使用も検討しつつ、複数の薬を併用すると副作用のリスクも高まるため、患者さんの様子を丁寧に確認しながら慎重に処方を行いました。

 ご本人の治療に対する意思がはっきりしており、それを理解し支えるご家族がいる。そして、ささいな体調の変化や不安も常に私たちと共有しながら、患者さん・ご家族・医療者が一緒になって治療を考えていく──。訪問診療の理想的な形が、ここにあるのだと、改めて感じさせられたのでした。

【連載】老親・家族 在宅での看取り方

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