がん対策に「運動」を強く推す理由…「みんなで筋肉体操」の教授に聞いた
がんが増殖しにくい体内環境を作る
がんと運動についての、代表的な研究例を紹介しよう。
がんの発症リスクの低下については、米国立がん研究所などが26種類のがんのリスクについて調べた大規模な観察研究の統合解析がある。13種類のがんにおいて身体活動量の多い人は発症リスクが低くなるという結果だった。治療中のQOL(生活の質)や副作用軽減については、米国臨床腫瘍学会の2022年のガイドラインでは、多くの臨床試験の分析に基づき、がん治療中の運動について、がん関連疲労の軽減、心肺機能や筋力の低下予防、不安・抑うつ症状やQOLの改善効果があるとしている。
治療後への影響はどうか? 例えば、大腸がん(高リスクのステージⅡ、またはステージⅢ)の術後・化学療法後の患者を対象とした臨床試験では、運動の継続を指示したグループは、健康教育のみのグループに比べて、8年までの死亡リスクが37%低下していた。
運動ががんに効く理由として、いくつかのメカニズムが挙げられる。
「運動は慢性炎症を抑え、糖代謝や免疫機能を改善するなど、がんが増殖しにくい体内環境を作ります」
なぜそんなことが起こるのか?
「これらは運動に対する体の適応として起こることです。人は動物なので、動くことで身体諸機能が整います。それが、がんなどの疾患“にも”効くと考えると理解しやすいかもしれません」
気になるのが、どれくらいの運動をすればいいのかということだ。
「『健康のための運動』として一般的に推奨されるのは、週150分以上の、息が上がる程度(中強度)の有酸素運動と、週2~3回の筋トレです。運動で体を変えるには、刺激の強さが重要。普段のだらだら歩きでは、健康のための運動にはなりにくい」
運動をする時間がないという人も多いだろう。谷本教授は「普段の道をジムに」と提案する。
「靴を歩きやすいものに、バッグをリュックにし、移動する時は大股で両腕を大きく振って速歩きをしてください。筋トレは、隙間時間を見つけて、スクワットや腕立て伏せを。さらに大股で歩くときに、少しでもよいので腰を1回1回落とすランジウオークを織り交ぜると、有酸素運動中に筋トレもできてお勧めです」
運動をする上で一点ご注意を。適度な筋トレはがんのリスクを下げる効果が複数の研究で示されているが、週に2時間を大きく越える筋トレは、逆にがん死亡リスクを上げる可能性も指摘されている。特に高重量にこだわるのは危ないかもしれない。
■8月30日に早稲田大学で「がんと運動ワーキンググループ」主催の市民公開講座(午後2時半~4時20分、午後2時開場)を開催。登壇者は谷本教授(写真左端)ら各ジャンルの専門家。入場無料、事前申し込み不要。参加者の質疑にはできる限り答えるという。


















