「土下座してでもやり直したい」妻との昇進レースに負けた夫、33歳で無職に。女性部下との“関係”に逃げた顛末

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コクハク

【不倫ドキュメント・ファイル~なぜ禁断の恋をするのか?】

 世の中、不倫の話題で持ちきりだ。2024年に実施された調査によると、既婚男性の約2人に1人、既婚女性の約3人に1人が婚外恋愛経験者だという。SNSやマッチングアプリが普及し、不倫のハードルは下がる一方。しかし、その裏にある人間の欲望と自己演出には注意が必要だ。

 ワイドショーの定番、それは芸能人の不倫騒動。謝罪会見に活動休止──愛に溺れた代償はあまりにも重い。

 世間が「不倫=絶対悪」と決めつけるなかで、それでも、人はなぜその扉を開けてしまうのか。禁じられた恋に身を投じる不倫の背景をCA、モデル、六本木のクラブママの経歴を持ち、数々の人間模様を見てきた筆者が読み解いていきたい。

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6歳下の部下と31歳で結婚

 不倫にはリスクと代償がつきものだ。それが人生を根こそぎ揺るがすほど「割に合わない」結末になることもある。

 今回話を聞かせてくれたのは、英二さん(34歳・飲食店勤務/再婚・子供なし)。彼の体験談は、女性たちにとっても「リアルな警鐘」だ。

「前妻の聡子とは職場で知り合いました。当時、僕は中堅の広告代理店に勤務。6歳下の彼女が他部署から異動してきて、直属の部下になったんです。

 内気だが、仕事は地道で完ぺき。派手さはないのに、ひたむきな姿勢に惹かれました。目立たず出しゃばらず、どこか守ってあげたくなる育ちの良さがありましたね」

 ふたりは同じチームで仕事を手掛けるようになり、交際を経て結婚に至った。英二さんが31歳、聡子さんが25歳のときだ。

妻が大プロジェクトメンバーに抜擢

「家事は分担制で、いずれは子どもも…と考えていた矢先、聡子に大きなプロジェクトの選抜チーム入りの話がきたんです。半年間の長丁場でしたが、彼女は『このプロジェクトに懸けてみたい。家事などの負担は英二さんにかけるかもしれないけれど、どうか理解してほしい』と頼みこんできて。

 内気だった彼女が目を輝かせている。これは夫として応援せねば、と快く送りだしました。もちろん、『妻に先を越された複雑な思い』はありましたが」

 その日から聡子さんは仕事にまい進するようになり、夫婦のすれ違いは徐々に深刻化していく。

「聡子は休日出勤もして、平日は夜遅く帰宅してベッドに直行。夫婦の会話は格段に減りました。僕は料理が下手なので、夕食はコンビニ弁当か外食です。

 聡子はプロジェクトチームでの会食も増えて、慌ただしいなりにも生き生きとしていましたね。僕も表向きは妻を応援しているため、あまり不満が言えなかった。でも、同じ会社で活躍している妻に、ときおり嫉妬心が湧くこともありました」

 英二さんの心に芽生えた苛立ちと不満は、さらに膨らんでいく。

29歳の派遣社員の女性との出会い

 そんなとき、ある女性との出会いがあった。

「派遣で来た里香(当時29歳・独身)という女性です。聡子とは正反対の華やかな容姿とあけっぴろげな性格で、とにかく話しやすい。仕事もそこそこできるし、何よりも女性としての魅力にあふれていました。

「気軽に話せる間柄になって、僕がたまたま『妻のプロジェクトが終わるまで、夕食はコンビニ弁当か定食屋なんだ』とこぼすと、里香は『健康第一ですよ。今度、私がお弁当を作ってきます。料理は得意なんで』と、手作り弁当を差し入れてくれたんです。

 これが驚くほど美味しくて、肉や野菜がバランスよく詰め込まれ、もう一つのタッパーにはフルーツまで。感激しました。明るく大らかな性格なので、他の社員からの評判もいい。

 もちろん、手作り弁当の件は秘密です。帰宅して弁当を食べ、洗ったタッパーを翌日返す。深夜に帰宅する聡子にはバレませんでした」

『妻に負けている』という負い目

 手作り弁当が続いたある日、英二さんは思い切って、里香さんに「どうして、こんなに優しくしてくれるの?」と尋ねた。

「里香は『なんとなく…放っておけなかったから』と呟いたんです。その恥じらう表情から、僕への好意を確信しました。

 妻とは完全にレスでしたし、夫として『妻に負けている』という負い目があった。そんな時に優しく寄り添ってくれる女性が現れたら、理性には勝てませんでした」

 手作り弁当スタートから1カ月後、2人は男女の仲になった。

「妻の聡子は休日出勤が続き、平日も遅くまで仕事です。帰宅してもシャワーを浴びたら倒れるようにベッドで寝る。

 半年間の大事なプロジェクトとはいえ、ここまで夫を無視するほうが悪いんだと無理やり言い聞かせて、里香にのめりこんでいったんです。デート場所は会社から離れたレストランや彼女のマンション。

 里香も『奥さんがいる人をこんなに好きになるなんて思わなかった。叶うなら、あなたと結婚したい』と、可愛いことを言ってくれる。会社では明るく大らかな彼女が、実はいじらしい一面を持っていることにも胸が熱くなりましたね」

全て知った妻は離婚を切り出した

 やがて半年が経ち、聡子さんのプロジェクトは大成功を収めた。しかし、思わぬ展開が待っていた。

「聡子の仕事ぶりが予想以上に良い結果を出したそうで、さらに大がかりなプロジェクトメンバーに抜擢されたんです。会社では、僕よりも圧倒的に妻のポジションが高くなっていた。

 時を同じくして、僕と里香の不倫のうわさが社内で広まっていることを同僚が教えてくれました」

 不倫の件は、聡子さんの耳にも入ったようだ。

「ある日、早く帰宅した妻に『話がある』と言われ、里香との関係を問いただされたんです。

 最初は濁していたものの、最終的には浮気を認めて『聡子が俺を放っておくからだ』と開き直りました。すると『じゃあ、離婚しましょう』とけんもほろろです。そのきっぱりした口調に、言い返すことはできなかった。

 ただ、一つだけ救いがありました。聡子と離婚しても里香がいる。彼女ならきっと僕を救ってくれるだろうという一縷の望みです」

大きすぎた不倫の代償

 離婚を選んだ2人は、後日、仲人を務めてくれた上司を交えて話し合うこととなる。その際、聡子さんは思わぬ発言をした。

「聡子は『離婚した夫とは同じ会社で働きたくない。夫が会社を辞めなければ、私が退職します』と言ったんです。

 会社で大きな実績を残し、今後も一大プロジェクトにかかわる妻の言葉は重く、結果、僕は退職する羽目になりました。懸命な就活で入社した広告代理店を辞めざるを得ない状況になり、放心状態でした」

 全ては不倫の代償だ。実家の両親とも絶縁状態になった。

 33歳にして無職。後悔と屈辱に包まれた英二さんを救ったのは、里香さんだった。

「里香は『私も会社を辞めるから、結婚してほしい。仕事は私の両親が経営するお店を手伝ってほしい』と涙ながらに言ってくれたんです。里香の親が飲食店を営んでいることを初めて知りました」

東北の小さな居酒屋で…

 結局、東北にある里香さんの実家に「入り婿」の形で行ったものの、英二さんの想像からは大きく外れていた。

「海沿いの町にある小さな居酒屋でした。里香も実家にいたころは手伝っていたそうで、だから料理も上手だったんですね。

 ただ、生活は肩身が狭いです。義理の両親と二世帯住宅で居場所はなく、あれほど尽くしてくれた里香は人が変わったように両親にべったり。

 僕は居酒屋の後継ぎとして働くことになったんですが、常連客に『よお、マスオ』と呼ばれる始末。東京の広告代理店で働いていた日々が夢のようで、聡子に土下座して『やり直したい』と謝りたい」

 ネットで検索すると、聡子さんは今、さらなる昇進を果たし、新しいパートナーと幸せに暮らしているという。一方、英二さんは「もう一度やり直したい」と悔やみながら、海沿いの小さな居酒屋で汗を流す日々だ。

 不倫の代償は「家庭が壊れる」だけでは終わらない。職も信頼も地位も、そして「自分の未来」さえ失う可能性がある――英二さんの後悔の言葉は、いま不倫に足を踏み入れている人たちへの痛烈な警告になる。

(蒼井凜花/作家・コラムニスト)

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