地方の時代は本当に来るのか

公開日: 更新日:

「福井モデル」藤吉雅春著

■「地方の時代」というお題目が輝きを失って久しい。だが、ここに来ての再・地方ブーム。果たしてそれは本物か。

 共働き率と合計特殊出生率(15~49歳の女性の年齢別出生率を合計したもの)で全国平均を上回る北陸3県。いずれも幸福度・世帯収入ともに高い。

 たとえばメガネの生産で世界に名を馳せた福井県鯖江市。本書によれば地元の人々は「日本でもっとも早く中国にやられた町です」と笑うという。格安メガネの大量流入に押しまくられたのだ。しかし鯖江は危機を逆手にとり、売れ行きデータを綿密に収集して逆に格安業者では手の出ない高品質化にかじを切った。これが功を奏し、鯖江は「最先端のデータシティー」に変貌を遂げたのだ。

 地盤沈下しない地方都市には歴史的に裏づけられた「強い教育力」と、古くからの近隣共同体が保持する平等な「協働システム」がある。これが富の一極集中で覇権を誇る東京にはない地方ならではの強さの源泉となるわけだ。

 週刊誌のルポライターとして長年の経験を積んだ著者によるいぶし銀のような地方再生の物語。「未来は地方から始まる」というサブタイトルが空念仏に聞こえない魅力を放っている。(文藝春秋1300円+税)



最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    山崎まさよし、新しい学校のリーダーズ…“公演ドタキャン”が続く背景に「世間の目」の変化

  2. 2

    ドラフト目玉投手・石垣元気はメジャーから好条件オファー届かず…第1希望は「日本ハム経由で米挑戦」

  3. 3

    高市自維政権で進む病人・弱者切り捨て…医療費削減ありき「病床11万床潰し」すでに3党合意の非情

  4. 4

    創価学会OB長井秀和氏が語る公明党 「政権離脱」のウラと学会芸能人チーム「芸術部」の今後

  5. 5

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  1. 6

    ソフトバンクに激震!メジャー再挑戦狙うFA有原航平を「巨人が獲得に乗り出す」の怪情報

  2. 7

    山崎まさよし公演ドタキャンで猛批判 それでもまだ“沢田研二の域”には達していない

  3. 8

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  4. 9

    米価暴落の兆し…すでに「コメ余り」シフトで今度こそ生産者にトドメ

  5. 10

    まだ無名の「アマNo.1サウスポー」評価爆上がり!23日ドラフト「外れ1位」なら大争奪戦も…