低血糖リスクのある人は知っておきたい「バクスミー」の効果と限界

公開日: 更新日:

■注射よりも簡便

 このような緊急事態を避けるために、低血糖症状が重篤な場合、グルカゴン注射を使用する方法がある。グルカゴンは最も強力な血糖上昇作用を持つホルモンで、肝臓のグルカゴン受容体と結合して活性化し、肝臓に貯蔵されているグリコーゲンをグルコースに分解して血液中に放出する。ただし、この治療法を実施するには、家族があらかじめ医療機関でグルカゴン注射の訓練を受け、グルカゴン注射セットを常備しておく必要がある。

「従来のグルカゴン注射は、冷蔵庫から取り出して注射器をセットし、溶解液を吸い取るなどの手間がかかりました。しかし、20年には新たな低血糖時救急処置剤『バクスミー』が登場しました。この点鼻粉末剤は1回使い切りで、グルカゴン3ミリグラムを含んでいます。点鼻容器の先端を患者の鼻腔に挿入し、ピストンを押すことでグルカゴンが鼻腔に放出され、鼻腔粘膜から吸収されます」

 バクスミーは、噴霧が完了したらすぐに医療機関に連絡し、医師の指示を仰ぐことが必要。ただし、飢餓状態、副腎機能低下症、頻発する低血糖、一部の糖尿病、肝硬変などの場合は、血糖上昇効果はほとんど期待できない。また、人によっては鼻痛、悪心、血圧上昇、嘔吐、耳痛などの副作用が現れることがある。もしもバクスミーが効かない場合は、追加投与せず速やかに医療機関を受診する必要がある。

 高齢化が進むにつれ、糖尿病の患者は増えている。糖尿病やその予備群の人はもちろん、身近にそうした人がいる場合は、低血糖に対する予防策を普段から講じておく必要がある。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本中学生新聞が見た参院選 「参政党は『ネオナチ政党』。取材拒否されたけど注視していきます」

  2. 2

    俺が監督になったら茶髪とヒゲを「禁止」したい根拠…立浪和義のやり方には思うところもある

  3. 3

    上野樹里“ガン無視動画”にネット騒然! 夫・和田唱との笑顔ツーショットの裏のリアルな夫婦仲

  4. 4

    巨人・阿部監督に心境の変化「岡本和真とまた来季」…主砲のメジャー挑戦可否がチーム内外で注目集める

  5. 5

    松下洸平結婚で「母の異変」の報告続出!「大号泣」に「家事をする気力消失」まで

  1. 6

    松本潤&井上真央の"ワイプ共演"が話題…結婚説と破局説が20年燻り続けた背景と後輩カップルたち

  2. 7

    “死球の恐怖”藤浪晋太郎のDeNA入りにセ5球団が戦々恐々…「打者にストレス。パに行ってほしかった」

  3. 8

    参政党トンデモ言説「行き過ぎた男女共同参画」はやはり非科学的 専業主婦は「むしろ少子化を加速させる」と識者バッサリ

  4. 9

    松本潤「19番目のカルテ」の評価で浮き彫りに…「嵐」解散後のビミョーすぎる立ち位置

  5. 10

    巨人エース戸郷翔征の不振を招いた“真犯人”の実名…評論家のOB元投手コーチがバッサリ