健康リスクをアップさせる「肥満症」の治療について考える
現在、さらに肥満症の治療を推し進めるために、肥満症の治療を行えば、そこまで無理なダイエットや厳しい食事制限をしなくても、体重が落ちて、心臓や血管、腎臓もある程度は保護することができるうえ、ほかの病気にかかった時の治療リスクも減らせる……といったエビデンス(科学的根拠)を確立するための研究データを収集しているといいます。
■バイパス手術の成績は“小太り”が良好
個人的には、「肥満症は病気だから治療すべき」とする詰めの部分での“根拠”がやや足りない印象もありますが、肥満という状態が心臓病をはじめさまざまな病気のリスクをアップさせて、特に高齢者では生活習慣病が進行した形での急性心筋梗塞、脳梗塞、腎不全による透析治療などの重症疾患を招き、医療費の増大を招いていくのはたしかです。それを解消することが健康維持にとって有効なのは間違いありません。
ただ一方で、心臓の冠動脈バイパス手術を実施した際の治療成績は、BMIが25~27で肥満とされる人の方が、BMIが低い人よりも良好だというデータが出ています。BMIが低い人の中には、低栄養で全身状態が衰えていたり、耐術能(体が手術に耐えられるかどうかの能力)が低い人も含まれるので、単純に数字だけを見て「痩せているよりも小太りのほうがいい」とはいえません。同じように、投薬治療を受けて「とにかく体重を減らせばいい」というわけではないのです。