がんの次世代放射線治療「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」はここまできた
現在のホウ素剤は開発から約50年たっており、現代の知識に基づき改作が切望されていた。
■過去に放射線を照射した部位にも適用
今回、東大などが開発したホウ素剤はその要望に沿ったもので、がん細胞内にとどまる時間を長くして、正常細胞にはたまりにくく、がん細胞にたまりやすく改良した。
「開発されたホウ素剤を使ったBNCTでは、ヒトの肺がんを移植したマウスの生存期間が85日以上と従来の1.8倍に延長したと報告されています」
また、ヒトの膵がんを皮下に移植したマウス実験では、開発したホウ素薬剤はがん細胞のホウ素剤濃度が約2倍となり、中性子照射で腫瘍が縮小したマウス数が従来の1匹に対して6匹だった。
気になるのはBNCTの安全性と効果。黒﨑医師が主導した再発乳がんの患者5人(37~76歳、すべての患者に薬物・放射線治療歴があり、1人を除き手術歴あり)に対する特定臨床研究では、大きな急性期有害事象は見られず、出現した有害事象も適切な対処で許容可能であったという。また、治療を受けた5人のうち4人が照射終了後90日または照射中止時までに部分奏功(腫瘍が30%以上縮小)と判定され、うち3人は照射終了後90日評価で腫瘍が50%以上縮小したことが確認されたという。