がんの次世代放射線治療「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」はここまできた
「がん細胞の表面には、栄養素(アミノ酸)の取り込み口であるLAT1(大型中性アミノ酸トランスポーター)が正常細胞の数倍から数十倍多く存在しています。異常なスピードで増殖するがん細胞はより多くの栄養素を必要としているからです」
しかもBNCTで使われるホウ素剤はがん細胞により取り込まれやすいようアミノ酸の構造式に似たつくりになっている。とはいえ、中性子には強い破壊力があり、照射の通り道に存在する正常細胞はダメージを受けるのではないか?
「BNCTに使われる中性子線は低エネルギーの熱中性子線。その可能性は低いと考えられています。しかも、中性子は物質の原子核に衝突するたびにエネルギーが失われていくため、有効距離が短く、中性子は体表面から6センチ程度しか届きません」
このためBNCTの対象は体表面に近いがんとされている。
再発・手術不能な頭頚部がんは2020年から公的保険の対象となる一方で、血管肉腫、非小細胞肺がん、食道がん、乳がん、脳腫瘍などへの治験や医師主導治験を行っている施設もある。