著者のコラム一覧
中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

前立腺がん…転移が少ないタイプは放射線が標準治療

公開日: 更新日:

 その結果、全体の分析では生存率に差が認められなかったものの、転移が少ない患者に限ると、生存率の差が認められたのです。3年生存率は、放射線照射グループが81%、照射しないグループが73%。統計的にも臨床的にも有意で、以前の定説が覆されました。

 この試験のベースとなったのが、原発巣が転移の「種」となって遠隔臓器に腫瘍細胞を送り出すのではないかという仮説でした。その供給源である原発巣を制御できれば全身の病勢を改善できるのではないか。

 こうした仮説を裏付ける結果は、オランダの試験でも確認されました。相次ぐ結果を受け、転移が少ない前立腺がんは、原発巣への放射線治療が標準治療のひとつになっています。

 放射線治療は、重い副作用が少ないのもメリットでしょう。尿が出せない状態の尿閉や出血などが減ることも確認されました。

 バイデン氏の治療選択は、英国やオランダの試験結果を受けたものと思われますから、標準治療です。前立腺がんは日本でも増加しています。男性の皆さんは、このことを頭の片隅にとどめておくとよいでしょう。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    秋季関東大会で横浜高と再戦浮上、27連勝を止めた「今春の1勝」は半年を経てどう作用するか

  2. 2

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  3. 3

    公明票消失で自民衆院「東京選挙区」が全滅危機…「萩生田だけは勘弁ならねぇ」の遺恨消えず

  4. 4

    星野監督時代は「陣形」が存在、いまでは考えられない乱闘の内幕

  5. 5

    「自維連立政権」爆誕へ吉村代表は前のめりも、早くも漂う崩壊の兆し…進次郎推しから“宗旨変え”

  1. 6

    ドジャース大谷翔平が直面する米国人の「差別的敵愾心」…米野球専門誌はMVPに選ばず

  2. 7

    国民民主党・玉木代表「維新連立入り」観測に焦りまくり…“男の嫉妬”が見苦しすぎる

  3. 8

    自民「聞いてないよォ」、国民・玉木氏「どうぞどうぞ」…首相指名の行方はダチョウ倶楽部のコント芸の様相

  4. 9

    号泣の渋野日向子に「スイングより、歩き方から見直せ!」スポーツサイエンスの第一人者が指摘

  5. 10

    「ガルベスと牛乳で仲直りしよう」…大豊泰昭さんの提案を断固拒否してそれっきり