不動のプロップ畠山健介さんが語る ラグビーW杯大会の行方

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不安要素は直前の南アとのテストマッチと代表監督経験のない指揮官

  ――南アとのテストマッチでは最終調整にも影響しますか?

 強豪チームとテストマッチをやれば、故障リスクもあります。直前に強豪と試合をすることで課題も見えてくるとは思いますが、勢いも大事です。イケイケドンドンで「自分たちはできるんだ」という状況で臨むのがベストだと思う。

  ――課題を見つけるより、自信を持ってW杯に臨むべき?

 W杯は開幕前から始まっています。開幕までにいかにベストな状態に持っていけるかが重要だと思います。フィジカル的にもメンタル的にも、どこにピーキングを持っていくのか。僕たちは4年前、初戦の南ア戦に向けてピーキングを持っていった。今回であれば、直前に行うテストマッチの南ア戦に持っていかざるを得ない。ベストな状態でなければ、南アにはボコボコにやられますよ。負ければ、世間の関心を向けられず、選手は(敗戦を)引きずったまま開幕を迎えなければならないでしょう。今回の代表選手は(開幕までに)難しい調整を強いられます。

  ――逆に、南アに勝てば選手の士気も高まるのでは?

 4年前のジョージア戦はベストメンバーで勝ちましたけど、疲労感が残り、故障者が出なかったのが不思議なぐらい。今の戦い方だと、しっかりがっぷり四つで戦うので、W杯にどう影響するのか懸念が残りますね。勝てば関心も高まりますし、選手のモチベーションは上がると思いますが……。

  ――ジョセフHCの采配はどう見ていますか?

 僕もジェイミーHC就任後、代表にワンツアー招集されました。今の代表選手から聞こえてくるのは「いい状態できてる」「いい方向だよ」などとポジティブな声が多いですね。懸念材料があるとすれば、ジェイミーHCはW杯で指揮を執るのは初めてですし、代表監督もキャリアで初めてなことです。不測の事態が生じた時に、対処できるか。ジェイミーHCはスーパーラグビーで実績のある監督ではありますが、W杯は別物だと思います。

  ――プールAは欧州2強のどちらかを倒さない限り、8強入りは厳しい。

 アイルランドが実力的に頭一つ抜けていると見ています。日本は、アイルランド戦は(負けても)仕方ないと見て2位狙いでいくのか、他の4チームで結託してアイルランドを潰しにいくのかで、戦い方も変わってくる。そうすれば、アイルランドも1試合ぐらい取りこぼす可能性もある。今の流れだと前者が有力だと思いますが。アイルランドに勝つというよりも、アイルランドをベスト8に行かせないために、4チームで結託した方が確率は上がると思います。

■欧州2強のバックスリーには要注意

  ――史上初の8強入りの可能性はありますか?

 アイルランドが初戦のスコットランド戦で負けることがあれば、実力的に日本も交えた三つ巴になり、3チームが勝敗で並ぶこともあり得ます。アイルランドは1次ラウンド勝ち上がりが目標ではなく、おそらく準決勝あたりにピークを合わせてくると思うので、取りこぼすこともある。日本がつけ入るチャンスはあると思います。

  ――2強を倒すには何が必要?

 アイルランド、スコットランドともバックスリー(WTB2人、FB)の11番、14番、15番にいい選手が揃っているので、日本代表はミスキックはできない。相手に(球が)渡れば、個人技で形勢を逆転されて致命傷になりかねないからです。キックの精度を高めて、周囲の選手がしっかりサポートしないと、一気に持っていかれてしまう。精度の高いキックをし続けるのが試合を左右することにもなります。

  ――前回は3勝しても8強入りできませんでした。

 前回、南アを下し、スコットランド戦も勝利を狙いにいきましたが、日程の都合もあって、ガス欠になってボコボコにされた。勝ちにいくのではなく、引き分け狙いだったらどうだったか。前回出場したメンバーにはボーナス点を得るトライ数(勝敗に関係なく4トライで1点)差や得失点差まで考えながら、戦ってもらいたいですね。

  ――日本代表で注目する選手はいますか?

 FWなら3大会連続になる堀江翔太です。世界を知っているし、あらゆる状況に対応できるだけに引き出しを持つ堀江は安定した働きをみせると思います。BKは福岡堅樹。絶対にトライ取ります。前回は1試合しか出場していませんが、この4年間で選手としても人間的にも、格段に成長しているのがうかがえます。

  ――FW戦を左右するスクラムに不安はないですか?

 15年以降、日本はレベルアップしています。今の代表はがっぷり四つでスクラムが組める実力を備えているので、(19年大会には)ポジティブな部分と捉えていいでしょう。

  ――日本代表の外国人選手の存在はどう影響していますか?

 戦力的にはもちろん、あらゆる国の選手が集まり、文化が交わることで、精神的にもプラスになっていると思います。例えば、前回の代表チームは、ある外国出身選手が「勝った時はみんなで歌おうぜ」と提案し、ボブ・マーリーの「バッファロー・ソルジャー」をアレンジした「ジャパニーズ・ソルジャー」を歌って、チーム全体で盛り上がりました。ラグビー界の人間からすれば、外国人選手がいるのは当たり前になっています。ラグビー界が、多様化が進む日本社会のモデルケースになってほしい。

(聞き手=近藤浩章/日刊ゲンダイ)

▽プールA
9月20日 ロシア戦(東京スタジアム)
9月28日 アイルランド戦(小笠山総合運動公園エコパスタジアム)
10月5日 サモア戦(豊田スタジアム)
10月13日 スコットランド戦(横浜国際総合競技場)

▽はたけやま・けんすけ 1985年8月2日生まれの34歳。宮城県気仙沼市出身。仙台育英高から早大に進学。大学では2年でプロップのレギュラーとして、大学選手権優勝に貢献した。卒業後はトップリーグのサントリーに入社し、W杯は11年ニュージーランド大会から2大会連続で出場。16年にはイングランドのニューカッスルでもプレーした。178センチ、113キロ。

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