夏の甲子園V候補はなぜ早々と散ったのか...1年通じた過密日程 識者は「春季大会廃止」に言及

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横浜・村田監督「センバツからの疲れが大きい」

 田尻氏によれば、ベスト4に進出した山梨学院の左腕・檜垣瑠輝斗(2年)、日大三の右腕・近藤優樹(3年)は、典型的な「工夫型」の投手だという。

 春夏連覇を目指していた横浜を巡っては、春からの過密日程に苦しんだ。村田浩明監督(39)は、甲子園の開幕前にこう言っていた。

「センバツを終えて帰ってきてからの疲れが大きいですね。3月30日に決勝戦を戦い、直後は招待試合に行かせていただいた。そして4月12日に春季大会の初戦を迎えましたが、手を抜くわけにはいきません。夏のシード権は不可欠ですし、センバツで勝てたのは神奈川で育ててもらったからこそです。何とか優勝することができましたが、関東大会ではレギュラー陣のコンディションを優先し、1年生の投手を先発させました。僕自身も疲れていたくらいですから、選手はもっと疲れていたと思います」

 センバツを制した横浜には、宮崎県などから招待試合の声がかかった。アゴアシ付きの遠征で、各地の強豪校と実戦経験を積めるメリットがある一方で、ベストメンバーで臨むのが礼儀とあって、レギュラー陣の負担は増える。

 実際、横浜の2年生エースの織田翔希は疲労が蓄積し、大会期間中に胃腸炎を患うなど、本来の調子とは程遠かった。背番号「1」を背負った投手兼野手の奥村頼人(3年)も、春のセンバツ後に左太ももを肉離れ。投手の調整に影響が出た。

 前出の田尻氏は「年間を通じて過密日程の問題が横たわっているのは確かです」と、こう続ける。

「2023年には、夏の甲子園でベスト4に入った土浦日大(茨城)が、甲子園で負けた翌日に秋季大会の県南地区予選に出場した。春季大会に関して言えば、夏季大会のシード権を取るための大会と化しており、本当に必要なのか? という疑問は残ります。春季大会を廃止し、夏季大会を1カ月間前倒しして6月に開幕すれば、選手の体への負担はかなりなくなると思います」

 そこで参考になるのが沖縄だという。

「今年の沖縄大会は6月14日に開幕し、7月13日に決勝を迎えた。試合は土曜、日曜のみでした。都道府県によって学校数の差はあれど、沖縄と同程度の学校数なら、前倒し開催は可能でしょう」(田尻氏)

 今夏甲子園が波乱の展開になっているのは、それなりの理由があるのだ。

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