新しい世界地図

公開日: 更新日:

「移民・難民たちの新世界地図」村山祐介著

 世界中に移民と難民があふれ、ウクライナやパレスチナの戦争は国際経済の姿を変える。いま変貌する21世紀の世界地図。



「移民・難民たちの新世界地図」村山祐介著

 いまや世界中に難民があふれる時代。他方、特に欧州などでは反移民デモが頻発している。

 本書によると実は「移民」に国際的な定義はないという。

「通常の居住地以外」の国に12カ月以上連続して住めば移民。ただし、密入国の場合や在留資格がないと「非正規移民」になる。人種・宗教・国籍・政治的意見・差別などが理由で迫害を受けるおそれがあれば「難民」になるのだ。

 著者は商社マンから新聞記者になり、今はフリー。一家でオランダに移住し、自身が移民になったジャーナリストだ。

 その視点でウクライナ、ベラルーシ、ドイツ、オランダ、ジョージア、地中海地方をルポしてゆく。紛争地帯では当たり前のように置き去りにされた死体を目撃する。

 ロシアのプーチンと盟友関係にあるベラルーシのルカシェンコ大統領は対立するポーランドにシリアやクルド難民を大量に密入国者として送り込む。ポーランド側はこれを「移民兵器」と呼び、通常の戦争と組み合わされた情報戦やサイバー攻撃などと同様の「ハイブリッド攻撃」と非難した。

 その現場で見捨てられた人々や子どもたちと向き合った著者渾身のドキュメントだ。 (新潮社 2420円)



「資源と経済の世界地図」鈴木一人著

「資源と経済の世界地図」鈴木一人著

 国際政治の分野では、かつて外交や軍事は「ハイポリティクス」、経済は「ローポリティクス」と分かれていた。しかし、1970年代のオイルショックを手始めに90年代以降のグローバル化は区分を曖昧にし、政治経済は一体として語るべきものとなった。

 現在の米中対立は、冷戦時代の対立とは違う。何しろ米中は、経済的には相手抜きに考えられないほど相互依存している。もし、それを断ち切ると「返り血を浴びてしまう」と東大で公共政策を講じる著者はいう。

 第3章では戦略物資としての半導体をとりあげ、資源のない日本が中国や国際社会に対して持ち得る「戦略物資」の有無が、相手にとっても不可欠な唯一無二の存在となれるかどうかの分かれ目だという。政府、自民党が唱える「戦略的不可欠性」は、たやすい話ではないのだ。 (PHP研究所 2365円)


「イノベーションの世界地図」上原正詩著

イノベーションの世界地図」上原正詩著

「イノベーション」とは市場の変化に直結する技術革新のこと。本書はそんな大変化を巻き起こしそうな新興企業とその可能性を、分野と地域別に世界に見いだす。

 AI、ビッグデータ、ドローン、宇宙開発。どれも新技術だが、用途の先は防衛産業に自動車産業と昔ながらの分野にも及ぶ。

 昨年夏、アメリカのビッグデータ分析企業パランティア・テクノロジーズの株価が一気に跳ね上がった。テロ対策の捜査と作戦を支援するソフトウエアの構築という高度技術を売り物に唯一無二の存在感を示したのだ。ゲノム研究、Eコマースなどのほか、暗号資産やメタバース、生成AIなどではGAFAMを中心とするビッグテックの優位がひっくり返される可能性もある。対立する米中、台頭するインド各国の実情が詳しくリポートされる。

 また「勃興する第四極」として英、スウェーデン、イスラエル、シンガポールまで視野を広げる。終章は「日本にはなぜユニコーンが少ないのか」。相変わらずの「鎖国マインド」や大学の質が問題だ。著者は元日経記者の経済アナリスト。 (技術評論社 2200円)


【連載】本で読み解くNEWSの深層

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    聖子&正輝の関係修復と健在ぶりに水を差す…沙也加さん元恋人による「踏み台発言」騒動の余波

  2. 2

    渋谷教育学園渋谷から慶大に進んだ岩田絵里奈を育てたエリート医師と「いとしのエリー」

  3. 3

    石川県知事選で現職の馳浩氏が展開した異様な“サナエ推し” 高市人気に丸乗りも敗北の赤っ恥

  4. 4

    「タニマチの連れの女性に手を出し…」問題視されていた暴行“被害者”伯乃富士の酒癖・女癖・非常識

  5. 5

    侍J山本由伸にドジャースとの“密約説”浮上 WBC出場巡り「登板は2度」「球数制限」

  1. 6

    1979年にオフコース「さよなら」がヒット! 無茶飲みしたのは20代前半

  2. 7

    NHK受信料徴収“大幅強化”の矢先に「解体を」の大合唱…チーフD性的暴行逮捕の衝撃度 

  3. 8

    “OB無視”だった大谷翔平が慌てて先輩に挨拶の仰天!日本ハム時代の先輩・近藤も認めるスーパースターの豹変

  4. 9

    和久田麻由子アナは夜のニュースか? “ポスト宮根誠司”めぐり日本テレビと読売テレビが綱引き

  5. 10

    侍Jで待遇格差が浮き彫りに…大谷翔平はもちろん「メジャー組」と「国内組」で大きな隔たり