著者のコラム一覧
奥野修司ノンフィクション作家

▽おくの・しゅうじ 1948年、大阪府生まれ。「ナツコ 沖縄密貿易の女王」で講談社ノンフィクション賞(05年)、大宅壮一ノンフィクション賞(06年)を受賞。食べ物と健康に関しても精力的に取材を続け、近著に「本当は危ない国産食品 」(新潮新書)がある。

夕方になると「帰ります」と家を出てどこかに消えてしまう

公開日: 更新日:

 ここが自分の居場所でないと分かったら、そこから逃げ出したいと思うのは私たちも同じだ。ただ認知症の人は、障害があるから帰れなくなるので「徘徊」と言われる。

「徘徊」にはさまざまな理由があって、連載第8回でも紹介した丹野智文さんは、いつも通勤に使う電車に乗れば間違いなく会社に行けるのに、間違って途中下車したら、自分がどこにいるか分からなくなってしまったという。

 風景をパターンで認識しているのか、こんな男性もいた。認知症になっても、コンビニの草餅が好きで、2日に1回は歩いて買いにいっていた。ところがある日、通い慣れた道にいきなり工事中の看板が出ていて、重機が運ばれて工事が始まった。それを見て、「あれ、ここはどこだろう?」と不安になり、道を間違えたと思って脇道にそれた。結局10キロ以上も離れた先で歩いているのを発見されたという。

■理由があるのに戻れなくなっただけで「徘徊」と呼ばれる

 また都内に斎子さんという認知症の女性がいた。要介護3だが、家ではいつもニコニコしていて穏やかな女性だ。ところが、夕方になると「帰ります」と家を出てどこかに消えてしまう。「夕暮れ症候群」と呼ばれる行動だ。ある時は一晩中歩いて、20キロ以上も離れた先で発見されたこともある。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    JリーグMVP武藤嘉紀が浦和へ電撃移籍か…神戸退団を後押しする“2つの不満”と大きな野望

  2. 2

    広島ドラ2九里亜蓮 金髪「特攻隊長」を更生させた祖母の愛

  3. 3

    悠仁さまのお立場を危うくしかねない“筑波のプーチン”の存在…14年間も国立大トップに君臨

  4. 4

    田中将大ほぼ“セルフ戦力外”で独立リーグが虎視眈々!素行不良選手を受け入れる懐、NPB復帰の環境も万全

  5. 5

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  1. 6

    FW大迫勇也を代表招集しないのか? 神戸J連覇に貢献も森保監督との間に漂う“微妙な空気”

  2. 7

    結局「光る君へ」の“勝利”で終わった? 新たな大河ファンを獲得した吉高由里子の評価はうなぎ上り

  3. 8

    飯島愛さん謎の孤独死から15年…関係者が明かした体調不良と、“暗躍した男性”の存在

  4. 9

    巨人がもしFA3連敗ならクビが飛ぶのは誰? 赤っ恥かかされた山口オーナーと阿部監督の怒りの矛先

  5. 10

    中日FA福谷浩司に“滑り止め特需”!ヤクルトはソフトB石川にフラれ即乗り換え、巨人とロッテも続くか