(40)退院の手配、契約手続き、ケアプラン作成…やるべきことは無数にあった

公開日: 更新日:

 日々、病院・施設、地域包括支援センター、ケアマネジャーから電話がかかってきて、書類も次々に届いた。退院の手配、契約手続き、ケアプラン作成などやるべきことが多すぎて、自分の仕事も進めなければならず、常に混乱していた。

 マルチタスクに自信のあった私でも処理能力に限界があるということを思い知った。しかも、相談する相手も、「疲れた」とこぼす相手もいないのだ。ひたすら孤独だった。

 飛行機で実家に移動し、いよいよ母の入所が明日という夜。施設からの指示通り、母の持ち物すべてに名前を書いた。タオル、肌着、洗面道具、コップまで、一つ一つに油性ペンで書いていく。

 私は、かつて母が私にしてくれたことを、今、しているのかもしれない。きっと私が初めて保育園に行く時、母は同じような作業をしたのではないだろうか。そのことに気づき、胸にこみ上げるものがあった。

 雨が降り始め、木の葉の落ちる音がよく聞こえる。午前3時ごろには豪雨となり、その激しさに不安がかき立てられたまま朝を迎えた。 (つづく)

▽如月サラ エッセイスト。東京で猫5匹と暮らす。認知症の熊本の母親を遠距離介護中。著書に父親の孤独死の顛末をつづった「父がひとりで死んでいた」

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    山崎まさよし、新しい学校のリーダーズ…“公演ドタキャン”が続く背景に「世間の目」の変化

  2. 2

    ドラフト目玉投手・石垣元気はメジャーから好条件オファー届かず…第1希望は「日本ハム経由で米挑戦」

  3. 3

    ソフトバンクに激震!メジャー再挑戦狙うFA有原航平を「巨人が獲得に乗り出す」の怪情報

  4. 4

    米価暴落の兆し…すでに「コメ余り」シフトで今度こそ生産者にトドメ

  5. 5

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  1. 6

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  2. 7

    大富豪の妻と離婚でファン離れ? イケメン既婚者俳優ディーン・フジオカの気になる今後

  3. 8

    自民×維新は連立早々に“成田離婚”も? 政策も理念も、「政治とカネ」に対する意識も、政治姿勢もバラバラ

  4. 9

    山崎まさよし公演ドタキャンで猛批判 それでもまだ“沢田研二の域”には達していない

  5. 10

    首相補佐官に就く遠藤敬氏に世間は「Who?」…維新の国対委員長が連立政権「キーマン」のワケ