(40)退院の手配、契約手続き、ケアプラン作成…やるべきことは無数にあった
日々、病院・施設、地域包括支援センター、ケアマネジャーから電話がかかってきて、書類も次々に届いた。退院の手配、契約手続き、ケアプラン作成などやるべきことが多すぎて、自分の仕事も進めなければならず、常に混乱していた。
マルチタスクに自信のあった私でも処理能力に限界があるということを思い知った。しかも、相談する相手も、「疲れた」とこぼす相手もいないのだ。ひたすら孤独だった。
飛行機で実家に移動し、いよいよ母の入所が明日という夜。施設からの指示通り、母の持ち物すべてに名前を書いた。タオル、肌着、洗面道具、コップまで、一つ一つに油性ペンで書いていく。
私は、かつて母が私にしてくれたことを、今、しているのかもしれない。きっと私が初めて保育園に行く時、母は同じような作業をしたのではないだろうか。そのことに気づき、胸にこみ上げるものがあった。
雨が降り始め、木の葉の落ちる音がよく聞こえる。午前3時ごろには豪雨となり、その激しさに不安がかき立てられたまま朝を迎えた。 (つづく)
▽如月サラ エッセイスト。東京で猫5匹と暮らす。認知症の熊本の母親を遠距離介護中。著書に父親の孤独死の顛末をつづった「父がひとりで死んでいた」。