健康を最優先していいとお墨付きをもらった気がした…批評家の杉田俊介さん糖尿病を語る
これでうまくいく気がしたのですが、10日ほどすると何度も低血糖症状が出るようになってしまい、インスリン注射を打つことになりました。朝晩、指先にパチンと針を刺して、その血を採って血糖値を測りました。毎朝自分で注射するのです。私はお腹でした。
じつを言うと、父も父方の祖父も40~50代で糖尿病を発症したので、「いつか自分もなるのかな」と漠然と思っていました。だからあまりショックはなく、むしろ「今までの自分を厳しく追いつめるようなむちゃな労働から逃れられる」と半分安堵したのが本音です。
フリーライターという仕事柄、多少無理をしても依頼された仕事は受けないと使ってもらえなくなると思って、次から次へと仕事を受け、ずっと仕事が生活の最優先だったのです。でも、糖尿病になったことで自分の健康や体を最優先していいのだと、お墨付きをもらった気がしました。
インスリン注射を始めて半年くらいでHbA1cの数値が安定したので注射は不要になり、今は血糖値を下げる飲み薬のみ。ただ、眼科で「糖尿病性網膜症の初期症状がある」と言われたときには暗い気持ちになりました。