<11>発がんの“ブレーキ役”を壊すには2つの遺伝子変異が必要

公開日: 更新日:

 では、このRb遺伝子はどのような働きをしているのか? 米国がん学会の会員で、最新のがん情報にも詳しい国際医療福祉大学病院内科学の一石英一郎教授が言う。

「Rb遺伝子からつくられたRBタンパクは、細胞分裂時に問題が起きたとき、細胞周期を止める働きをすることがわかっています。細胞周期を進めるために必要なE2Fと呼ばれる転写因子(遺伝子発現のスイッチ役)に抱きついて動きを止めるのです」

 細胞が増殖するときはまず、遺伝子が書かれているDNAを合成しなければならない。そこから細胞をつくるのに必要なタンパクがつくられ、細胞分裂が行われる。細胞分裂するにはこのDNA合成―細胞分裂―DNA合成……のサイクルを繰り返す。細胞分裂と次の細胞分裂の間に起こる一連の過程を細胞周期と呼び、その過程はG1期、S期、G2期、M期の4つある。

「とりわけ重要なのがG1期とS期の間です。DNAの合成を始めるかどうか、つまりは細胞周期を回すかどうかを決める時期だからです。このときDNAに傷があることがわかれば、細胞周期を停止して傷を治します。治らなければアポトーシス(自死)に向かうようにします。もしRb遺伝子が変異してRBタンパクがなくなれば、細胞周期が止まらず増殖が続くことになります」

 その重要さ故にRb遺伝子は「細胞周期の統治者」と呼ばれるという。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  2. 2

    巨人・桑田二軍監督の電撃退団は“事実上のクビ”…真相は「優勝したのに国際部への異動を打診されていた」

  3. 3

    クマ駆除を1カ月以上拒否…地元猟友会を激怒させた北海道積丹町議会副議長の「トンデモ発言」

  4. 4

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  5. 5

    クマ駆除の過酷な実態…運搬や解体もハンター任せ、重すぎる負担で現場疲弊、秋田県は自衛隊に支援要請

  1. 6

    露天風呂清掃中の男性を襲ったのは人間の味を覚えた“人食いクマ”…10月だけで6人犠牲、災害級の緊急事態

  2. 7

    高市自民が維新の“連立離脱”封じ…政策進捗管理「与党実務者協議体」設置のウラと本音

  3. 8

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  4. 9

    恥辱まみれの高市外交… 「ノーベル平和賞推薦」でのトランプ媚びはアベ手法そのもの

  5. 10

    引退の巨人・長野久義 悪評ゼロの「気配り伝説」…驚きの証言が球界関係者から続々