感覚器と心臓(5)「難聴」がどれくらい進んだら補聴器の使用を検討するべきか
しかし、日本ではまだまだ補聴器の普及率が低いことが課題になっています。日本補聴器工業会の調査によると、日本における補聴器の普及率は15%で、55%のデンマーク、53%のイギリス、46%のフランス、44%のスイスといった欧米諸国と比べてかなり低い数値です。1台あたり平均15万円程度という高額な価格設定や、日常生活の不便さやストレスよりも「恥ずかしい」「面倒くさい」といったイメージが先行しているといえるでしょう。また、精密機器のために装着してすぐに快適な聴力が得られるという期待感が高く、ある程度の調整期間が必要な現状が日常の装用を妨げることにつながっているといいます。私が診療する高血圧患者さんでも疾患による適正血圧は個人差があって、内服調整に際して長いと半年くらいを要することもあるので、敏感な感覚器の調整にはしっくりと構えることも重要かと考えています。
購入費や機器の進歩を遅滞なく使用可能とするために今後は、国のさらなる助成をはじめ、補聴器メーカーや販売店が一定期間は定額料金で補聴器を利用できるサブスクのような仕組みを導入するといった、より手軽に使える環境整備が必要ではないかと考えます。