腸内細菌の最大の敵は「薬」…不必要な多剤併用を避けて腸を整える
特に現在の医療上の重要課題のひとつであるポリファーマシー(多剤併用)がどのように腸内細菌叢に作用するかを解明する上で重要な一歩となったと根来医師は言う。 例えば、同時に投与された薬の数が増加すればするほど、短鎖脂肪酸を産生する菌種が減少することが報告された。短鎖脂肪酸は、腸内の弱酸性化を保ち悪玉菌の増殖を抑えることで、便通を促したり腸の蠕動運動を活発にするなどの働きがある。
そもそも加齢で腎臓や肝臓の機能が低下している高齢者の中には、異なる病気治療のために違った医療機関から同じ作用の薬を処方されることが少なくない。なかには薬の副作用を新たな症状と誤解して新たな薬が処方される「処方カスケード」もみられる。このため、高齢者は若者に比べて薬剤有害事象で入院する割合が7倍も多く、80歳以上の入院の7%は薬剤有害事象が関係しているとの見方もある。
「これらは、薬の副作用だけでなく第二の脳とも呼ばれる腸の機能を低下させ、必要以上に心身のバランスを崩す原因になっている可能性もあります。健康長寿のためには腸内マイクロバイオータを安定させるために、複数の薬を飲み続けている人は定期的にかかりつけの医師、薬剤師などに薬の相談をすると良いでしょう」 (つづく)