心臓を回復させる遺伝子の研究はデバイス治療に対する“楔”になる
これまで私は、将来的なトラブルをなるべく減らし、患者さんの生活の質をできる限り低下させないことを熟慮して手術に取り組んできました。自分の技術、知識、経験を駆使して、血管や心臓弁などその患者さん本人の組織を修理してうまく使いながら、なんとかより良い状態で回復させる方法、その患者さんにとってベストである治療を行ってきました。
それに対し、現在の医療が高齢者や超高齢者に行われる機会が増えたことで、若手医師たちは早期から人工物=インプラントを使用するデバイス治療を選択する傾向が目立ちます。その方が低侵襲で患者さんの回復も早く、術後管理も手間がかからないからです。ただ、高齢ではなく比較的若い壮年期の患者さんにも同じような治療を適用し、術後の生活制限や将来的なトラブルのリスクをそれほど深く考えず、すぐに新しい人工物=インプラントを使ういまのデバイス医療は、「その患者さんにとってベストな治療法はなんなのか」という発想が欠けていると言わざるを得ません。
■高いQOLを得られる
若手医師がこうしたデバイス治療に偏る理由のひとつとして、患者さんの負担を減らす低侵襲の誘惑を持ちかけられて容易に医療機器開発メーカーとの関係性を強めてしまう傾向が挙げられます。こうした若手医師たちは、自分たちの負担も減らせることを覚え、医療の原資を守る姿勢やひいては患者さんを守る姿勢を少しずつ忘れて、医療機器開発メーカーに踊らされてしまうこともあるのです。


















