森保監督の生みの親・今西和男氏「彼は今の時代に合っている指導者」

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モリ・ポイチと呼ばれていた

 ──日本代表初の外国人監督にオフトが就任して「シャイで若かった森保の成長を確認した。中盤で試合の流れを読め、規律を持って攻守ともにサポートできる」と代表に大抜擢した。すると代表のチームメートから「モリか? モリホか? 名字がモリで名前がポイチとか?」と言われた。

 その逸話は聞いたことがある(笑)。なかなかモリヤス・ハジメと呼んでもらえず、ポイチと呼ばれていたそうですな。

 ──サッカー選手にとって、良い監督は「自分を使ってくれる監督」。控え選手は不満を募らせるものだが、森保ジャパンに森保監督を悪く言う選手は皆無に近い。

 ワシらが現役の時代は「オレの言うこと、聞いとらんのか!」と指導者に理不尽に怒鳴られても黙々とプレーした。ワシは「人の話を考えながら聞く」「自分の思いが伝わるように考えながら話す」ことの重要性を広島の選手に伝えた。今は指導者が選手の話をじっくりと聞き、選手の方から監督の懐に飛び込んで対話する時代になった。森保は<今の時代に合っている指導者>と言える。

 ──森保監督が、五輪代表監督に就任したときに「長崎で育って広島でサッカー人として成長させてもらった。(被爆地との関わりから)平和をアピールしたい」という趣旨の発言をしている。

 そういったことにも思いが及ぶところが、いかにも森保らしいと思った。原爆が投下された日(45年8月6日)、4歳だった私は被爆して左腕、左足に大きなケロイドが残った。人に見られるのがイヤで半ズボンははけんかった。サッカーを始めたのは高2になってから。14歳で被爆した広島の大先輩・長沼健さん(2008年に77歳で死去。第8代日本サッカー協会・会長)に日本代表選考合宿で初めて会ったとき、「ワシも差別されて嫌な思いをした。悔しい気持ちをサッカーで晴らそうじゃないか」と元気づけられました。

 ──カタールW杯で森保ジャパンはドイツ、コスタリカ、スペインと戦う。非常に厳しいグループに入った。

 手ごわい相手ばかりじゃねぇ~。どう勝機を見いだすか? しっかり守るのは当たり前。でも守ってばかりではイカン。ちゃんとリスク管理をしつつ、時には勇気を持って攻めることも必要となる。そこの見極めが大事になってくる。

 ──森保監督にとって初のW杯本大会参戦ですが、浮足立ったり、平常心を保てなくなるという心配は?

 まったく心配はしていない。森保は現役時代、(94年米国W杯最終予選で)あのドーハの悲劇を経験している。一瞬の隙が命取りになる。そのことが骨身に染みている。沈着冷静に戦ってくれるだろう。

 ──自分の眼力を信じて見いだした長崎の無名選手が、日本代表を率いて大舞台に臨む。

 感慨もひとしおだ。本大会では、やはりチームプレーが大事になる。東洋工業・マツダの時代から、広島はチームプレーでライバルに対抗してきた。謙虚さを忘れず、組織的に戦うことの大切さを森保は知っている。日本代表のスタッフ、選手が集中力を切らさず、チーム一丸となって強豪国に対抗してくれるでしょう。森保なら必ずやってくれると信じとるけぇ~の~。頼むでぇ~。

(聞き手=絹見誠司/日刊ゲンダイ

▽今西和男(いまにし・かずお) 1941年、広島市生まれ。舟入高-東京教育大(現筑波大)から東洋工業(現広島)。元日本代表DF。広島でGM、総監督、強化部長など歴任。大分、愛媛、岐阜の要職に就きチームの立ち上げ、強化、昇格などに貢献。94年にはJFA強化委員会副委員長に就任。98年仏W杯出場をバックアップした。吉備国際大の教授、同大サッカー部総監督など歴任。

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