自宅近くはタクシー利用が困難…配車アプリも使いこなせない
2型糖尿病は、血糖値を下げる働きのあるインスリンの分泌が不足したり、働きが弱くなることで発症します。多尿や喉の渇き、疲労感に加えて、進行すると視力の低下や手足のしびれが現れ、重症化すると失明や壊疽(手足が腐る)に至ることもある、非常に恐ろしい病気です。
患者さんの自宅を訪問すると、冷蔵庫はあるものの電子レンジはなく、生活は非常に困窮していました。元気だった頃は、焼きそばなどの簡単な料理を自分で作ることもできたそうですが、食事があまり取れなくなってからは、お酒やたばこに依存するようになり、生活状況は悪化。ADL(日常生活動作)のレベルも決して高いとはいえませんでした。
それでも、これまでは1キロほど離れた地域のクリニックへ、歩行器を使いながら自力で通っていたそうです。しかし、下痢や嘔吐を繰り返すようになり、体調が急激に悪化。通院が難しくなったため、在宅医療へと切り替わりました。
なお、タクシーを使わず歩行器で通院していたのは、経済的な理由に加えて、患者さんの住む地域が狭い道路が入り組んだ住宅街で、タクシーをつかまえるのが困難だったからです。今では「ウーバー」や「GO」といったタクシー配車アプリがありますが、高齢者がそれらのアプリを使いこなすのは簡単ではありません。
このように、徒歩以外の移動手段が限られている地域に暮らす高齢者にとっては、自宅に訪問してくれる在宅医療の重要性がますます高まっていると、あらためて感じました。