のみ込む能力が残っている患者の嚥下訓練はどう進めるのか
大切なポイントは、覚醒が低いままの状態で摂食すると誤嚥のリスクが高くなるため、「嚥下の意識化」を行います。覚醒を向上するには、生活リズムを整えて良質な睡眠を確保すること、日中は離床して十分量の立位歩行訓練で脳に刺激を入れること、脳浮腫や脳圧の管理を行うこと、必要に応じて覚醒を向上する内服治療をすることが必要になります。そして、周囲が声をかけるなどして「これから食事をする」という意識を高め、一口ごとに食べ物を見せて、口に運んで「ごっくん」とのみ込む動作を意識的に行ってもらいます。
また、食事形態を考えた介入も大切です。必要なカロリー量とタンパク量を考慮したおいしい食事を提供するのは大前提として、その患者さんが安全にのみ込める食事の形態の評価をはじめ、硬さ、粘度、味、温度などを調整したり、一口でのみ込める適切な量を確認して調整します。食欲がない方には嗜好に合わせた特別食も検討します。
さらに、しっかり食べてのみ込むために、食事姿勢の設定も大切です。嚥下造影検査で誤嚥しない座位の角度を評価して、リクライニング車椅子で30度から90度まで背もたれの適切な角度を調整します。座位が困難な場合でも、その患者さんに適切なリクライニングの角度を設定して、ポジショニングを調整します。