「AYA世代」のがん患者の診察が増加…全国に広がる支援事業
ある患者さんは、母親として息子さんと少しでも長く過ごすため、自宅での在宅医療を選びました。
大好きな息子さんのために台所に立ち、手料理をテーブルに並べ、家族みんなで一緒に食卓を囲み、思い出を語り合う──。そんな日々を望んでの選択でした。
しかし、その時間は思いのほか短く、自宅療養を始めて間もなく息子さんを残して旅立たれました。
患者さんは早くから覚悟を決め、終活を済ませ、財産も生前に息子さんへ譲っていました。ところが亡くなった後、その財産は高額な医療費の支払いに充てられることとなります。息子さんは「母が残してくれた財産だから、母のために使う」と語ったそうです。
現在、東京都では介護保険の対象外でも自宅で過ごしたい人を支援する「若年がん患者在宅療養支援事業」があります。制度内容は地域によって異なりますが、全国に広がりつつあります。
年齢や病名、住んでいる場所、家族構成など、患者さんを取り巻く状況はさまざまです。在宅医療は高齢者だけでなく、現役世代や若い世代にとっても有用で、大切なセーフティーネットとしての役割が今後ますます求められるでしょう。