前立腺がん手術後の深刻な尿漏れを改善する「人工尿道括約筋」とは?
前立腺がんの手術(前立腺全摘)後に起こる尿漏れ。なかには術後半年以上たっても改善せず、日常生活に大きな支障を来すケースもある。命は救われたが、外出のたびにトイレを気にし、常にパッドが手放せない──。そんな悩みを抱える人は決して少なくない。だが、この尿漏れには保険適用の治療法があることは、まだ広く知られていない。国立がん研究センター東病院泌尿器・後腹膜腫瘍科科長の増田均医師に話を聞いた。
前立腺は膀胱のすぐ下で尿道を取り囲み、尿道を締める外尿道括約筋に隣接している。手術では、がんを根治するため前立腺をすべて摘出するが、その際、括約筋への影響をできる限り抑える工夫が重ねられている。
「それでも術後に尿漏れが起こることがあります。外尿道括約筋と骨盤底筋群が尿禁制に最も重要ですが、前立腺自体も尿を保つ機能に関与しています。前立腺が急になくなると体がすぐに対応できず、一時的に尿漏れが出現します」
時間の経過とともに、残った外尿道括約筋と骨盤底筋群が役割を補うようになり、多くは改善していく。骨盤底筋体操や括約筋機能を強化する薬物治療(いずれも保険適用)は、その回復を後押しする。約3割は術後早期から尿漏れがみられないという。
尿漏れは術後1年程度まで改善が期待できる。術後6カ月までには多くがパッド0~1枚に落ち着く。しかし、6カ月時点で1日4~5枚以上使う場合、その後の改善は乏しいことがわかっている。括約筋の障害が強い重症例では、体操や薬の効果は限られる。
「重症は1~3%、中等症を含めると約6%が持続的な尿漏れに悩むと推察されています。この場合の治療のゴールドスタンダードが人工尿道括約筋の埋め込みです」
人工尿道括約筋は、シリコーン製のカフ、圧力調整バルーン、コントロールポンプからなる装置を体内に埋め込む治療だ。通常はカフに入った生理食塩水が膨らみ、尿道を圧迫して尿の“ストッパー”となる。いわば人工の括約筋である。
排尿時は陰嚢内のポンプを指で数回押す。するとカフ内の液体がバルーンに移動し、尿道への圧迫が解除されて尿が出る。指を離せば約3分で元の状態に戻り、再び尿道を締める(イラスト参照)。海外調査では満足度は90%、同じ悩みを持つ人に勧めたいと答えた人は96%に達している。


















