(13)「がん」は夜に成長するのか? 体内時計とがん細胞の意外な関係
夜勤などによって体内時計が乱れる生活と、一部のがんの発症リスクとの関連も研究されている。しかし、これは主に「がんになりやすいか」という問題であり、すでにできたがんが「一日のうち、いつ成長するか」という問題とは別だ。夜更かしをしただけで、がんが急に成長するというわけではない。
体内時計の研究は、がん治療の時刻を考える「時間治療」にもつながっている。薬の代謝や排泄、DNA修復、免疫の働きなどは、時間帯によって変化する可能性があるためだ。
ハーバード大学医学部&ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀行医師は、免疫チェックポイント阻害薬の投与時刻をめぐる研究について、「進行肺がんなどの患者を対象とした観察研究では、午前中に投与された患者の生存期間が長い傾向が報告されている一方、投与時刻による差が認められなかった研究もある」と指摘する。また、現時点では、午前中の投与が一律に有利だと結論づけることはできず、さらなる検証が必要だという。
がんは、夜になれば必ず成長が速まるという単純な病気ではない。体内時計ががん細胞や免疫、周囲の組織にどう作用するか、逆に、がん細胞が体内時計にどのように影響するのかということを解き明かすことが、将来、治療効果を高め、副作用を減らす手がかりになる可能性がある。研究の焦点は「がんは夜に成長するのか」という問いから、「体内時計やサーカディアンリズムを、がんの予防や治療にどう生かせるのか」へと広がっている。=つづく



















